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Q14.賃貸マンションの契約前のキャンセル

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☆画像は記事とは関係ありません。
※当ブログご利用上の注意事項は、トップページをご覧ください。

Q14.賃貸マンションの入居申込みをしました。
 いろいろと不動産会社の担当の方から説明を受けたのですが、諸費用の内容に納得がいかず、申込みを保留にしてもらってます。まだ重要事項の説明も受けていません。
 申込みのときに「手付金」を支払っているのですが、もしキャンセルした場合には「手付金」は返してもらえないのでしょうか?

(ネタ元:ある方からのご相談&私自身の経験)

A14.まだ契約が成立していないのであれば、「手付金」は返してもらえるものと思われます。
 なぜならば、契約成立前であれば法律上「手付金」には該当しませんので、原則どおり全額返金の対象となるからです。
 ただし、どの時点をもって契約成立とみるか、諸説あることに留意しておいてください。
 また、契約成立後であれば、「手付金」を放棄することで契約の解除を行うことができると考えられます。この場合、不動産会社に支払った仲介手数料については、契約の解除に至った要因が不動産会社にあるなど特段の事情があったときを除き、原則として返金されないものと考えられます。

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(解説)
1.不動産会社を通した入居手続の流れ

 まずは、質問の解説をする前に、不動産会社を通した賃貸マンションの入居手続の流れを確認しましょう。
 というのは、どの時点でキャンセルするかによって、結論が異なってくるからです。

(1)場所、家賃、設備など自分の希望・条件を不動産会社に伝える

(2)希望に沿った物件をいくつか選んでもらい、実際に部屋を見せてもらう

(3)紹介された中で気に入ったものがあれば、入居申込書を記入、提出して入居申込みをする。
 この際、他の人に入居されないよう、物件を押さえるために「手付金」と称する金銭を入金するよう言われる場合がある。

(4)重要事項の説明をしてもらう。
 この説明は、物件の現況や契約内容の概要などを宅地建物取引主任者(通称「宅建」)という有資格者により説明を受けます。
 説明は、説明書が渡され、説明書に基づいて行われます。

(5)入居審査。
 不動産会社は、申込書内容や不動産会社の担当者が見た入居予定者の状況を貸主に伝えます。それを踏まえて、貸主が入居を承認するかしないかを決めることになります。
 なお、不動産会社が貸主から契約締結の代理権を得ていれば、不動産会社が代理人として承認することになると思われます。代理権があれば「代理」、なければ「媒介」又は「仲介」という表示が広告や物件案内書、重要事項説明書などに記載されているはずです。
 もちろん、この時点で不承認であれば、契約は成立しません。

(6)契約書の作成・借主の署名・捺印
 通常、不動産会社が作成します。契約書(2通)は手渡し又は郵送により送られ、契約書への署名捺印を求められます。署名・捺印後、不動産会社に持参又は郵送にて提出します。

(7)契約書への貸主の署名・捺印、返送
 不動産会社は、借主の署名・捺印のある契約書を貸主に送付します。貸主は1部を保管し、もう1部を署名・捺印した上で不動産会社に返送します。

(8)契約書の交付
 (7)で不動産会社に返送されてきた契約書が借主に送付されます(貸主から直接交付される場合もあり)。

(9)引渡し。部屋の鍵を渡されます。

(10)入居

 ただ、実際には(3)から(5)は同時並行で行われるケースが多く、場合によっては(6)まで一気に進む場合があります。

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2.契約が成立するのはいつか
 法律上、契約が成立するのは、双方が合意したときです。つまり、入居者が「借りたい」と申し込んだのに対して、貸主が「じゃあ、貸す」と承諾した時です(民法526条1項)。契約成立のために契約書は必ずしも必要はありません(ただし、定期建物賃貸借(いわゆる「定期借家」)については、契約書がないと契約は成立しません(借地借家法38条1項))。

 この考え方を単純にあてはめますと、上記1の「流れ」で言えば、(5)の入居審査の段階で、貸主が入居を承認した時点で契約が成立することになります。

 しかしながら、長期にわたって継続する契約であること、金額も売買ほどではないにせよ、比較的多額の費用が発生する可能性があることから、契約の申込みにあたっては、事前に契約内容のうち重要な部分が事前に分かっていることが前提だとする考え方があります。
 といいますのも、重要事項説明によりある程度契約内容は予告はされてはいるものの、説明後に契約内容が変わっている可能性があります。借主が重要事項説明で説明を受けている内容とは異なる内容に変更されているのを知らないまま、貸主が「入居認めます」という返事をもって、契約成立とするのは借主にリスクがあることになります。

 そうすると、契約内容を知った上での申込みと考えると、それは契約書に署名・捺印をして、その契約書が貸主に到達した時点に申込みがあったとする見方ができます。そして、これに対して、貸主が契約書に署名・捺印をして不動産会社又は借主に発送した時点で契約が成立するという見方ができます。

 この考えで行けば、契約書に署名・捺印をしていないのであれば、契約の申込みそのものがまだされていないとみることになります。

 いずれにせよ、いつの時点で契約が成立するのかについては、諸説あります。あくまで上記は1つの考え方として受け止めてください。

■入居審査で契約は成立するという考え方の例
 大阪府 「賃貸借における預り金の拒否に関する注意点」
 http://www.pref.osaka.jp/kenshin/azukari/index.html

■一般的に契約書により締結した時点だという考え方の例
 不動産ジャパン 「不動産基礎知識 借りるときに知っておきたいこと 7-1」
 http://www.fudousan.or.jp/kiso/rent/7_1.html

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3.「手付金」とは何か1
 手付金とは、文字通り、契約に「手を付ける」際にやりとりする金銭のことです。
 契約そのものは金銭のやりとりがなくとも、2.で説明したとおり、お互いが合意すれば契約は成立します。
 でも、お金を伴わないと「本当に契約を守ってくれるだろうか?裏切ったりしないだろうか?」って思うのも、また人のココロです。
 だから、お金のやりとりをすることによって、「お互い、安心して契約で決めたことをきちんとやっていきましょう」ということを確認することができるのです。
 このように、契約をしたことの証拠としての機能があります。これを法律業界では「証約手付」と言ってます。

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4.「手付金」とは何か2
 法律上の「手付金」についての定義を説明しましょう。民法557条1項にこんなことが書いてあります。いはく、

 「手付金を支払った人は、手付金を放棄することで、理由に関わらず契約解除をすることができます。
 また、手付金を受け取った人は、受け取った手付金の2倍額を返還することで理由に関わらず、契約解除をすることができます。」
と。

 このように、手付金をやりとりすることにより、双方とも理由にかかわらず契約を解除する権利を得ることになります。このような手付金を法律業界では「解約手付」と言います。
 法律にしっかり書いてある手付金なので、お互い特別な取り決めがなかったら、手付金と言ったら「解約手付」のことを指します(最高裁判所昭和29年1月21日判決)。

 賃貸マンションの契約にあてはめて説明しますと、入居者は既に支払った手付金を放棄する、つまり、既に支払った「手付金」の返金を求めないことを条件に、契約を解除することができる、ということです。
 また、解除の理由は貸主や不動産会社等に告げる必要はありません。

 ただし、手付金による契約解除はいつでもできるわけではなく、「相手方が履行に着手するまでの間」に限られます。
 賃貸マンションの契約にあてはめて説明しますと、契約で定めたことを相手である貸主(仲介する不動産会社ではない)が行う前に限られる、ということです。

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5.申込金なら返金請求できる
 手付金についてどのような取り決めがあろうと、手付金をやりとりするということは「契約が成立した」証拠である、と判断されます。
 逆に言えば、手付金は契約成立以降に授受される金銭である、と言えます。

 そうすると、今回のご相談のように、契約成立「前」に授受した場合にはいくら表現上「手付金」という言葉を使ったとしても、法的には「手付金」ではない、ということになります。

 一般的に、申込時に添える金銭は「申込金」とか「申込証拠金」と言われるもので、契約交渉の優先順位を確保するために授受されるものと解されています(この考え方を示したものとして、平成20年度版 宅地建物取引主任者法定講習テキストp74「紛争事例№4 賃貸借媒介時の『預り金』の返還請求に応じない」)。
 この「申込金」は、契約成立前にやりとりする金銭ですから、法律上の「手付金」ではありません。
 ですから、契約成立前にキャンセルをする(「申込みの撤回」といいます。)場合、「手付金」を放棄する必要はなく、全額返金の対象となるわけです。

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6.預り金に関する宅地建物取引業法上の規制
 冒頭の事例のように、契約成立前に申込みをキャンセルするのであれば、既に支払っている「手付金申込金」を仲介している不動産会社に対して返金を求めることができます。

 しかしながら、「お客様がお支払になったのは『手付金』です。お客様の都合でキャンセルするなら、申し訳ありませんが『手付金』はお返しできません。」と説明し、返金を拒むことがあります。

 不動産会社を規制する「宅地建物取引業法」に次のような規定があります。

(宅地建物取引業法47条の2第3項)
 宅地建物取引業者等は、前二項に定めるもののほか、宅地建物取引業に係る契約の締結に関する行為又は申込みの撤回若しくは解除の妨げに関する行為であつて、宅地建物取引業者の相手方等の保護に欠けるものとして国土交通省令で定めるものをしてはならない。

(宅地建物取引業法施行規則16条の12)
 法第四十七条の二第三項 の国土交通省令で定める行為は、次に掲げるものとする。
 1号略
 2号  宅地建物取引業者の相手方等が契約の申込みの撤回を行うに際し、既に受領した預り金を返還することを拒むこと。
 3号略

(※宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方 第47条の2第3項関係)
 2 預り金の返還の拒否の禁止について(規則第16条の12第2号関係)
 相手方が契約の申込みを撤回しようとする場合において、契約の申込み時に宅地建物取引業者が受領していた申込証拠金その他の預り金について、返還を拒むことの禁止である。例えば、「預り金は手付となっており、返還できない。」というように手付として授受していないのに手付だと主張して返還を拒むことを禁ずるものであり、預り金は、いかなる理由があっても一旦返還すべきであるという趣旨である。(2011年12月26日改正により追加)

※行政機関である国土交通省の解釈であり、厳密には法令ではありません。国土交通大臣が行政処分を課すにあたり法令違反行為にあたるかどうかの判断基準を示すものと考えられます。なお、各都道府県は独自の解釈をすることができますが、たぶんに国土交通省の解釈を参照することになると考えられます。

 不動産会社は、本来貸主に支払われる申込金を直接入居予定者から預るわけですから、申込金は、ここでいう「預り金」に該当します。
 お客さんが申込のキャンセルを申し出たにもかかわらず、申込金の返還を拒むことを禁止している条文です。

 ですから、「お客様がお支払になったのは『手付金』です。お客様の都合でキャンセルするなら、申し訳ありませんが『手付金』はお返しできません。」といって、返金を拒む行為をすることは、宅地建物取引業法47条の2違反となり、免許権者(国土交通大臣や都道府県知事)の改善命令(指示処分といいます)や営業停止(業務停止処分といいます)といった行政処分の対象となりえます。

 このことから、不動産会社の免許権者(重要事項説明書や広告などに記載されています)を確認のうえ、国土交通省の地方機関(地方整備局や北海道開発局)や都道府県庁の不動産業担当課の助言を得るのも1つの方法です。
 不動産業の担当課一覧(国土交通省のサイト)
 (国土交通大臣免許の不動産会社の場合)
 → http://www.mlit.go.jp/sogoseisaku/1_6_bf_000018.html
 (都道府県知事免許の不動産会社の場合)
 → http://www.mlit.go.jp/sogoseisaku/1_6_bf_000019.html
 
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7.終わりに
 春先の繁忙期ですと、「今の時期は、(入居者が)すぐに決まりますから、早く(物件を)押さえないと」と急かされて、申込をしてしまうこともあるでしょう。
 やはり、生活の本拠となる場所なのですから、あわてず、しっかり決めましょう。特に、意味不明な(!)諸費用については、納得するまで担当者に聞いてください。
 ちなみに、不動産会社は収益を上げるために、仲介手数料(上限は家賃1ヵ月分+消費税分)だけでなく、諸費用から収益を上げる傾向が見受けられます。この話はまた別の機会に取り上げたいと思います。

 最後の最後の余談ですが、このご相談者が利用した不動産会社と私自身が利用した不動産会社は同一でした。札幌なら誰でも分かる有名な会社だということを付言しておきます。

【不動産業界の方へ 参考】
 実務的視点から賃貸借契約の成立時期に関する論考として
 「賃貸住宅契約の成立についての一考察」(不動産適正取引推進機構 RETIO №81 p31-p45 平成23年4月)

(終。ご意見ご感想お待ちしております。)

<更新履歴>
■2012年2月6日
 2011年12月26日改正の 「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」の関連箇所を追記しました。

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コメント

HP参考になりました
いま私も同じ件で悩んでいるところでした

ありがとうございました

>>沙田さん
はじめまして。
多少でもお役に立ったのであれば幸いです。

お客様が、賃貸物件の申し込み書を提出され、賃貸人の承諾をえて、民法上は契約が成立したのですが、賃貸人の方から、今回の契約はキャンセルしたいと申し出がありました。承諾後3日後に。契約書も交わしていません。賃貸人若しくは不動産会社は、違約金を支払う必要はあるのか。

>>マーサさん
 こんにちは。文面からすると、賃貸借契約の媒介(仲介)をした業者の従業員の方でしょうか?

 記事本文にも載せてありますが、契約がどの時点で成立したかというのは、いくつか説があるようです。
 契約が成立したという前提でお話をしますと、貸主側からの一方的キャンセルであれば、借主は貸主に対し債務不履行を理由とする損害賠償又は違約金を請求することが予想されます。
 もし、当該賃貸借契約において、債務不履行に係る損害賠償や違約金の額を定めているのであるならば、借主はその約定額を請求することになるでしょう。また、損害賠償額の定めがなければ、借主はその被った損害の額を借主自身が証明した上で請求することになるでしょう。

 いずれの場合であっても、貸主が契約を解除するに至る過程において、これに直接間接の関与といった特段の事情がなければ、賃貸借契約における当事者ではない当該契約を媒介した宅地建物取引業者は、損害賠償や違約金を支払う義務はないものと思われます。

 いずれにせよ、貴社の顧問弁護士あるいは法務部門の担当者に相談し、貴社の顧客でもある貸主に対し、いかなる対応が適切なのか判断を求めてみてはいかがでしょうか。

(その他、一般的相談先)
・不動産取引、契約分野に精通している弁護士
・貴社が所属する宅地建物取引業者の団体の相談窓口
・(貴社がいわゆる中小企業に該当するのであれば)商工会議所や都道府県等に置かれている中小企業支援センターの法律相談窓口

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